2014年1月19日日曜日

M2 gallery 濱浦 しゅう 「ハヤチネ」



 冬の岩手を撮影したシリーズ。「ハヤチネ」とは、岩手県の宮古市・遠野市・花巻市の3つの市にかかる早池峰山のことで、六角牛山・石上山と共に「遠野三山」と呼ばれ「遠野物語」の中にも登場する山である。
 山陰地方出身の作者は地元島根と岩手に降る雪の違いに気づく。ボタ雪の降ることの多い山陰地方とは違う、岩手に降る粉雪に魅力を感じ撮り始めたという。粉雪が降り積もる山間の景色に清浄で清涼な浄土の世界を感じた。静かな山間を白く染める凛とした寒さは、その場にいる者の心を清く洗い流してくれるような厳かさを感じさせる。
 丁寧に手焼きされたモノクロプリント。柔らかく滲んだ景色、リズミカルに画面を走る雪や木の枝、作者の自由な表現に好感の持てる展示だった。

 濱浦 しゅう http://hamaurashu.com/

2013年9月2日月曜日

G/P gallery 村上友重「この果ての透明な場所」


 2012年、オランダの写真雑誌「Form Magazine」による「Form Talet」賞を受賞した村上友重の写真展。
 「見えない」という現象をコンセプトに作品を制作している写真家。それは「見る」ということへの渇望を意味しているように思う。作品全体に白く霞みがかかったイメージ。目を凝らしても見えないその先に魅せられ、写真家は前へ前へとその歩みを進めていく。
 私は、この霞の向こう側に自身の内面と対峙させらているような錯覚を覚える。作品の向こう側へと向かわせる引力と自身の内側へと向かわせる斥力、相反する二つの作用がこのシリーズの魅力の一つになっているのではないだろうか。

 G/P gallery 村上友重「この果ての透明な場所」
  http://gptokyo.jp/archives/1390

2013年8月27日火曜日

ALAIN LABOILE


 フランス、ボルドー生まれ。
 彫刻家として石膏による人物像を創作していた経歴を持つ写真家。モチーフは家族写真。父親としての子供たちに対する暖かい視線や、目まぐるしく遊び回る子供たちをユニークな構図で切り撮った作品からは、写真家の独特な世界観が伺える。撮影から紙への出力までデジタルによるものらしいが、プリントの仕上がりも秀逸。
 写真家自身のHPがあるので、興味のある方はご覧下さい。
  アラン ラボワール http://lab.carbonmade.com/

2013年8月25日日曜日

tokyo arts gallery Marion Dubier-Clark 「From San Francisco to Los Angeies」

 フランス ノルマンディー生まれの写真家。
世界中を旅しながらポラロイドカメラによって撮影された作品群はカラフルでキャッチー。アメリカの街並や看板、プールや果物。被写体は様々で女性らしく愛らしい目線の作品も多い。
ポラロイド特有の調子は、作品の雰囲気を柔らかく、観るものを空想的な風景へと誘う不思議な感覚を助長するようでもある。

 9月末まで青山にあるCIBONEでも作品を観ることができるとのこと。興味のある方はぜひ。

 tokyoarts gallery
  http://www.tokyoartsgallery.com/

2013年8月18日日曜日

芦谷 淳 「POINT LANDSCAPE」


 「人工物と自然の接点」として風景写真を制作している写真家。
道路や鉄塔、電線や轍など、純粋に美しい自然の風景写真とは切り口の異なる風景写真で、自分自身あまり目にする機会のなかった欧米では「ニュー・トポグラフィックス」と呼ばれているジャンルの風景写真。
 トポグラフィックスとはギリシャ語で「場」を表す「トポス」と「画法」を表す「グラフィックス」から成る言葉である。写真家の視点は「自然」ではなく「人間によって生み出された環境」にあり、一見すると冷たく殺伐としたイメージに見えるが、緻密な構図によって切り取られたこれらのイメージ群には、環境問題に対するコンセプトを内包している。

  芦谷 淳 http://ashiya.s2.weblife.me/index.html

2013年5月21日火曜日

Emon Photogallery 藤岡直樹「flora」

 広告業界で活躍している写真家 藤岡直樹の写真展。
 郊外へ出かけ、気になる花を見つけると白い背景で植物を覆い、その時の自然光だけで撮影しているシリーズ。背景を白で隠された植物は淡いトーンで捉えられ、その表現には一切の誇張が排されているように見える。その日、その場所で自然とある様を丁寧に切り取られた作品からは、日頃の喧噪からのストレスを忘れ、自らの然るべきある姿を見つめ直す、そんな自分を客観的に慈しむような気分にさせる印象を持つ。
 花は儚くも力強い姿で人にヒーリングの効果をもたらすが、ストレートに捉えられたこれらの作品群からもそれは十分に感じられる。花をモチーフに作品制作を行う写真家は少なくないが、ここまで素直な表現を目にすることは少なく好感が持てた。

http://www.emoninc.com/

2013年5月13日月曜日

Photo Gallery International 濱田祐史 「Pulsar + Primal Mountain」

 「見る」ということはどういうことなのか?「見えない」とはどういうことなのか?という謎を視覚表現である写真を通して探求することをテーマに作品制作を行っている写真家。
 今回の展示は「Pulsar」と「Primal  Mountain」という2つのシリーズで構成されてる。「Pulsar」シリーズでは、独特のビジュアルで具体的には形を持たない「光」というものを表現していて、普段、目では認識しづらいその光景は私たちになじみ深い景色をある種、幻想的のものへと変え、その光の有り様に驚かされる。
 また「Primal Mountain」シリーズは、一見すると山の風景写真のように見えるが仕掛けがあり、視覚による絶対的信憑性に頼ることへの危うさ、目で認識することに対する先入観の影響力、概して「見る」ということに対して再考させられるシリーズになっている。どちらのシリーズも明確なテーマに裏付けされたコンセプチュアルな作品群であり、改めて、現代アートのジャンルの一つとしてある写真という媒体のあり方について考えさせられる展示だった。

 http://www.pgi.ac/content/view/373/1/lang,ja/